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スクラムイベントに出席しない優秀で不可欠な(?)エンジニアをどう扱うか

みなさんこんにちは。@ryuzeeです。

スクラムマスター用のロールプレイのお題をTwitterに書いたら、多くの方から「自分ならこうする」という案を頂いたので共有します。

今回のお題は、以下のものです。

その他のお題はこちらにあるので、チームで自由に遊んでみてください。

あらかじめ言っておきますが、どの対応が正解というのはありません

これは、あくまでロールプレイなので、色々なオプションを考えておいて、実際にそのような状況に遭遇したら、その状況に合わせて対応方法を選択すれば良いでしょう。 ただ、1つだけ言えるのは、チームの意向なしにスクラムマスターが単独で色々なアクションを取るのは(チームのステージによりますが)やりすぎの可能性はあります。

事実を探る

あるメンバーが本当にデイリースクラムや各種イベントに来ないのか、それはどれくらいの頻度なのか、どんな理由があるのかというような事実はアクションする前に知っておくと、打ち手の選択肢が広がりそうです。また内職している理由も、例えば他のチームと兼任してて仕事が溢れかえっているといった理由も考えられるので明らかにすると良いかもしれません。 一方で、いきなり本人に直接聞くと、先入観を持つ可能性もあるので、純粋なファクトデータとして、チームメンバーから「実際に発生した事実」を具体的に収集する手もあります。

現実を受け止める

この状態でも成果が出ていて、本人も周りもそもそもこの事象を課題だとも思っていないのであれば、敢えて今そこに触れる必要すらないかもしれません。 パンドラの箱をあけるにはそれなりの覚悟も必要になります。 今解決すべきいちばん大事な問題なのか、そうじゃないのかによって、行動の優先順位は当然変わります。

チームで話し合う

チーム自体で、この人のことを問題だと思っているのであれば、レトロスペクティブでテーマにする手もあります。 ただし、チームとして問題だと思っていないのに、スクラムマスターがテーマとして取り上げてしまうと、吊し上げのようになる可能性もあり、ますます本人が辛くなる(もしくはこじらせる)可能性もあるので、事前に仕込みをしておくのは賛成です。 また、チームのメンバーが事実や理由を理解せず、印象だけで色々なことを言う可能性もあるので、先にファクトデータなどを収集しておくと良いかもしれません。

そもそもその人は本当に不可欠?

これは鋭い視点で、チームの中で必要不可欠で、周りから優秀だと思われている人は、規律に関してもしっかりとふるまうことが多いです。 Effective DevOpsの8章(8.2.6)で、このような例についての解説があります。

『多くの場合、このような人物が組織のためにすることは、技術的にも文化的にも、とうてい「価値がある」レベルとは言えない。特に、業界内でその企業がこういった問題行動に耐性がある(あるいは奨励している)という評判が立ってしまったら損害は大きい。』

したがって本当にこの人が必要不可欠なのか、この人がどれくらい貢献しているのか、一方でこの人のせいでどんな問題が起こったのかを明らかにすると良いでしょう。 その上で、チーム自身が、その人を必要ないと判断できるのであれば、プロダクトオーナーや組織のマネージャーにそれを伝えても良いでしょう(一般的にスクラムマスターはチームメンバーを外す権限はないと言われています)。

もちろん、本人のふるまいが、他の理由(複数案件を掛け持ちしている、仕事があふれている、プライベートで問題を抱えている)の可能性はもちろんあるので、そこは把握が必要です。

期待値を明確にする

本当に優秀な人は先を見通すスキルを持っていることが多いです。 分かりやすく言えば、このプロダクトやプロジェクトはうまく行きそうか、行かなそうかを早い段階で察知します。 そこで問題点や改善点を打ち上げて、良い方向に持っていこうとふるまいます。 一方で、ステークホルダーやプロダクトオーナーがこれに対してずっと耳を貸さないような状況が続くと、モチベーションが低下していきます。 もちろんプロなので、規律に従って全力は尽くさないといけないのですが、人間ですので。 こういうときは、一度立ち止まって、プロダクトのビジョンやゴールを確認したり、各メンバーに対する期待値を明らかにしたり、といった足元の活動をやり直してみるといいかもしれません。

プロセスやイベントの有効性を常に気にかける習慣をつける

イベントが形骸化していて、役目を果たしていないが故の可能性もあります。 さんざん指摘してもデイリースクラムが単なる報告会になっていた、スプリントレビューにステークホルダーが来ない、みたいな状況であれば、時間のムダなので作業を進めたい、と思うのも不自然ではありません。このケースでも、こうなる前に本人がプロセスに対してフィードバックや懸念を表明していたかもしれません。 継続的に、それぞれのイベントやプロセスがどんな意味や効果を持つのか、チーム内やステークホルダーを交えて確認し続けておくと良いでしょう。

内職をさせない仕掛け作り

これは普段のミーティングやイベントをどのように進めているのかによりますが、全員がPCを開いているような会議だと内職しやすくなります。 チームのワーキングアグリーメントを決めて、会議の進め方を決めておくのが、よく使う方法です。 僕が昔働いていた会社では、集中して参加が求められる会議だと、冒頭に「クローズドラップトップ」宣言がなされて、全員がPCを閉じてから開始することもありました。 ルールを決めても守らない人がいる場合は、みんなでその人を眺めて待っているというのは分かりやすい対応だと思います。

それでは。