ふりかえりの実施状況に関する調査結果 (Annual Agile Retrospective Report)
みなさんこんにちは。@ryuzeeです。
アジャイル開発に関する調査レポートはVersion OneによるAnnual State of Agile Surveyなどをはじめとしていくつかあります。
今回retriumという会社が、Retrospective(ふりかえり)に特化した調査を行った資料を公開したので、簡単に紹介します。 なお、レポートはこちらから無料でダウンロードできます。
調査の概要
回答者は277人で、そのうち44%は米国在住者です。 回答者の分布は33%がスクラムマスター、16%が内部コーチ、13%が外部コーチ、12%がリーダーやマネージャーとなっています。
調査結果の紹介
前述のとおり項目数が多いので、その中からいくつか特筆すべき項目について見ていくことにしましょう。 なお数字はレポートからの引用、文章はその数字に対する私のコメントです。
Retrospectiveで難しい点はなにか
なかなか厳しい結果が並んでいますが、多くはファシリテーターがあんまり上手でないことに起因していそうです。 心理的安全性は効果的なRetrospectiveを行うために非常に重要です。アジャイルレトロスペクティブズの書籍でも最初に場の設定をする重要性が説明されています。
状況 | 割合 |
---|---|
議論した内容をチーム単体で解決するのが困難 | 48% |
安心して話せないことがある | 44% |
チームが分散している | 36% |
いつも特定の人ばかりがしゃべる | 32% |
ネガティブなことばかりにフォーカスする | 27% |
トピックの選択が良くなかったりアクションに合意しない | 25% |
チームがやりたがらない | 23% |
組織やマネージャーがRetrospectiveの価値を分かってくれない | 20% |
どのくらいの時間をかけているか
どのくらいの時間を使うのかはスプリントの長さに依存します。 一方で、Retrospectiveには仕事を強制的に止めるという意味もあるので、あまりに短すぎるのは考えものです。 また、逆に半日かけても同時にたくさんのアクションアイテムをこなすことは難しいので、ムダになってしまう可能性があります。
状況 | 割合 |
---|---|
30分〜1時間 | 55% |
〜2時間 | 31% |
30分未満 | 13% |
半日 | 1% |
どんなやり方で通常おこなっているか
上位2つは、いずれもスプリント中のアクティビティに注目するものになっていて、思ったよりも他のやり方をしているところが少ない印象です。
状況 | 割合 |
---|---|
うまくいったこと/いかなかったこと | 46% |
KPT | 19% |
感情分析 | 10% |
Lean Coffee | 5% |
特にテクニックは使っていない | 3% |
タイムライン | 2% |
感謝の表明 | 1% |
違うやり方をする頻度は?
いつも同じやり方でやるとマンネリ化しやすいですが、多くは違うやり方を取り入れているようです。
状況 | 割合 |
---|---|
不定期 | 28% |
毎回 | 22% |
違う観点が必要なとき | 21% |
いつも同じやり方をしている | 17% |
交互 | 10% |
どれくらいのアクションアイテムを出すか
思った以上にアクションアイテムの数を絞り込んでいるところが多いという印象です。 実際のところ、たくさんのアクションアイテムを出すことが偉いわけではなく、決めたアクションを終わらせることが重要です。 多くのアクションを出しているところほど、具体的でないアクションとなっていて、やったかやってないかがハッキリしない傾向にあると感じます。
状況 | 割合 |
---|---|
1〜5個 | 78% |
6〜10個 | 16% |
11〜15 | 3% |
何も出さない | 3% |
どんな道具を使っているか
全員同席であれば、やはり物理的な付箋やホワイトボードが効率的で、それを示しています。
状況 | 割合 |
---|---|
付箋紙 | 58% |
ホワイトボード | 55% |
Confluence | 20% |
オンラインボード | 13% |
Google Docs | 11% |
Google Spreadsheet | 6% |
アクションアイテムのトラッキング方法
アクションアイテムがなし崩しにならないようにトラッキングするのが重要なのは言うまでもありません。 アジャイル用のツールに入れる、というのはプロダクトバックログアイテム化するということでしょう。すべてのアクションアイテムをプロダクトバックログアイテムにできるとは限らないのでそこは工夫が必要に見えます。 物理のタスクボードは、常に全員が見えるので、やったかやってないかがハッキリし、確実に終わらせようとする力が働きやすくなります。
状況 | 割合 |
---|---|
Agile用のツール | 36% |
物理のタスクボード | 31% |
ドキュメント | 28% |
スプレッドシート | 14% |
以上、ご参考まで。
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- 著者/訳者:西村 直人、 永瀬 美穂、 吉羽 龍太郎
- 出版社:翔泳社
- 発売日:2020-05-20
- 単行本(ソフトカバー):288ページ
- ISBN-13:9784798163680
- ASIN:4798163686