プロダクトバックログとスプリントバックログの見積もり

 2016/12/25

みなさんこんにちは。@ryuzeeです。

以前お客様先でスクラムのトレーニングを実施した際に、プロダクトバックログとスプリントバックログの見積もりについて質問をいただきました。 見積りについてはもっとも質問をいただく項目の1つでもあるので、ここでスクラムにおける見積もりについて書いておくことにします。

プロダクトバックログの見積り

まずはプロダクトバックログの見積りについて考えてみましょう。

なぜプロダクトバックログ項目を見積もるのか?

なぜプロダクトバックログを見積もるかといえば以下の理由です。

  • そのプロダクトの全体を把握する。全体のサイズが分からないと現在の進捗が把握できません。もちろん全てのプロダクトバックログ項目を絶対に作るかといえばそうではなく、途中で項目が追加されたり削除されたりしますが、それでも全体の概要を把握しようとすることには意味があります
  • 同じ理由で、スプリント単位でどれくらい完了できるかを把握するためにも見積もりが必要です
  • 全体の見積もりとスプリント単位での完了の実績がわかれば、指定した期日までにどれくらいが完了するのか、もしくは全てを完了するのにどれくらいの時間がかかるか推定できます。この推定はスプリントを繰り返せば繰り返すほど正確になっていきます
  • これらはすなわち事実に基づいて計画を更新できるようになることを意味します
  • また見積もりがあれば、ビジネス価値と比較して規模が大きすぎるものは作らない判断をする、もしくはビジネス価値と比較して規模が小さいものは優先順位を上げるといった対応も可能になります。すなわち限られたリソースや期間の中で最大限の成果を出すための計画の精度があがります
  • なお、計画はたてることに意味があって、そのとおりにすすめることに意味があるとは限りません。したがって見積もりにおいて過度な精度は不要で、おおよそのサイズがわかるだけでさまざまな判断の材料になります

プロダクトバックログ項目の見積りのタイミング

これを踏まえるとおのずと見積もるタイミングは明らかです。見積りは以下のタイミングで実施するのがおすすめです。

  • プロジェクトの初期で最初のプロダクトバックログの洗い出しがおおよそ終わったとき。ここでの見積りは全体の把握に使います
  • 最初のスプリントを始める前。最初のスプリントの開始前に少なくともそのスプリントで着手すべきプロダクトバックログの項目が準備完了になっている必要があります(でないと大きな手戻りが発生するリスクが高くなります)。準備完了になったプロダクトバックログの上位の項目は見積りをし直します。準備完了の状態であれば見積りの精度が向上するためです
  • 最初の数回のスプリントが終わった時。最初のスプリントは成果がでないことも多いので、何回かスプリントをこなしたあとで、残っているプロダクトバックログの項目を見積り直します。その時点で開発チームは実際の開発を行った経験があるため、プロジェクト初期にくらべると見積りの精度は向上します
  • その後の定期的な見直し。もちろんプロダクトバックログの項目は随時追加されるので、追加された項目の優先順位が高い場合は適宜見積りを行います。またプロダクトバックログを分割したりもするので、分割した項目の見積りや、全体の見直しを行います

言い換えるとプロジェクトの期間中、未着手のプロダクトバックログ項目については、継続的に見積り直しが必要ということになります。 プロダクトバックログが更新されるづける成果物であるということは見積りも更新され続けるということなのです。 なお、完成したプロダクトバックログ項目を見積りし直すことに意味はありません。

プロダクトバックログ項目の見積りには何を使うか

スクラム自体ではどんな方法を使って見積もるかは定義していません。すなわち見積りの方法の選択肢としては以下のいずれも考えられます。

  • 物理単位付きの絶対見積り。例えば人日や人月、万円など
  • ポイントを使った相対見積り。よく使う方法にプランニングポーカーがある。プランニングポーカーでは、1・2・3・5・8・13などのフィボナッチ数列のカードを使って見積もる
  • Tシャツサイズ。プランニングポーカーを簡易にして、S(小さい)、M(中くらい)、L(大きい)、XL(かなり大きい)などのサイズに分類する
  • 見積もらない。全てのプロダクトバックログ項目をだいたい同じ大きさに分割し、そもそもプロダクトバックログ項目の個数をさまざまな計算に使う

このうち絶対見積りについては、外したときのインパクトが大きいこと、それを理由にして見積りが紛糾しやすいこと、数字がついているとその数字が外部に約束として扱われてしまうリスクが高くなることから避けておくのが無難です。また見積もらずに全ての項目を同じサイズに分割するのも経験が要求されるので難易度は高いでしょう。 ということで、プランニングポーカーによる相対見積りかTシャツサイズ見積りが初期のチームにはおすすめです。

スプリントバックログの見積り

次にスプリントバックログの見積りについて見てみましょう。

なぜスプリントバックログ項目を見積もるのか

スプリントバックログを見積もる理由は以下の通りです。

  • スプリント計画会議ではそのスプリントで着手するプロダクトバックログ項目を選択して、それらをスプリントバックログに分割しますが、それぞれの作業項目を見積もることで、本当にそのスプリントで選択したプロダクトバックログ項目が完了しそうなのかを予測できるようになります
  • すなわち作業項目の合計時間が、開発チームがスプリントで使える時間を超過していた場合、たとえプロダクトバックログの見積りについては過去の結果から達成できそうであっても、現実的には難しい可能性があるということが分かります。このときはプロダクトオーナーと開発チームが相談して、なんらかのプロダクトバックログ項目を諦める判断をすることになります
  • 毎日残り作業に必要な時間を追跡していくことで、スプリント終了までに予定した項目が終わりそうかが分かります。すなわちバーンダウンチャートがかけるようになります
  • つまり、もしスプリントの途中でこのままいくと終わらないであろうことが判明した場合にすぐにプロダクトオーナーと調整が可能になります
  • また見積りをしておくことで、タスクに想定外の時間がかかっている場合に、開発チームとして速やかな対処(スウォーミングなど)も可能になります

スプリントバックログの見積りのタイミング

スプリントバックログは、選択したプロダクトバックログ項目を完了させるための作業のリストなので、スプリント計画会議で見積りを行います。 全てのプロダクトバックログ項目を事前に作業に分解する必要など決してありません。必要になったタイミングで必要な分の計画を行えば十分です。 なぜなら、スプリントバックログの見積りは、スプリント単体の計画と追跡のためだけに使うからです。 またスプリント中には新たにタスクに気づいたり、タスクの実施によって他のタスクの難易度が変わることもあります。従って必要に応じて日々見積りを更新します。

スプリントバックログ項目の見積りには何を使うか

スクラムガイドで定義されているのは、残作業が追跡可能であるようにすべきという点だけです。 一般的には、ここでの見積りには時間を使うことが多いでしょう。 それはスプリント計画会議でキャパシティとの比較が容易になる点や、バーンダウンチャートによる追跡が容易になる点によるものです。 時間を使う場合、1タスクあたりの最大サイズは1日くらいの規模が望ましいでしょう。 そうすれば日々のデイリースクラムにおいて、昨日も今日も同じタスクに取り組んでいる場合異常が起こっている、と容易に理解できるためです。 もちろん成熟したチームであれば、タスクをなるべく同じサイズに揃えて、個数で管理するといったことも可能です。

それでは

 2016/12/25

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