ブログ

ryuzeeによるブログ記事。不定期更新

テスト自動化について5分で分かるまとめ

みなさんこんにちは。@ryuzeeです。

テスト自動化について簡単に教えてほしいと言われることが多いので、以下にまとめました。

テスト自動化/テスト駆動開発について

  • XPのプラクティスの中で、最も単体で導入しやすいプラクティスの1つである
  • このプラクティスのみで1冊の本が書けるくらい奥が深い
  • 基本的な方法
    • 失敗するテストを書く
    • できる限り早く、テストがパスするような最小限のコード本体を書く
    • リファクタリングをする
  • 適用範囲
    • 通常では、独立性の高いクラスやファンクションへの適用が良い
    • GUIや分散オブジェクト、自動生成されたコード、DBのスキーマに関するテストは導入が難しい
    • 既存システムにおいて、テストが準備されていない場合に、部分的に導入するのは難易度が高い。したがって新規プロジェクトの初期から導入することが望ましい
  • 問題点
    • 開発者が仕様を誤解していた場合、誤解に基づくテストコードが作成されるため、誤解の検知は保証できない。あくまで開発者が作成するコードが、開発者が認識するテストコードに適合していることのみが保証される

自動化されたテストが満たすべき性質

テストは以下の条件を満たしている必要がある。

  • 簡単実行
    • テストの準備に大量の時間や人手がかかるようにしない
  • 自己検証
    • テストが成功したか、失敗したかはプログラムが判断する。(人手で判断しない)
  • 繰り返し可能
    • 何回でも繰り返し実行できること。また実行ごとに結果が変わらないこと
  • 独立性
    • 環境や外部のコンポーネントに依存しないこと
    • テストケースの実行順序に依存しないこと

自動テストをどこまで作るべきか?

  • テストの自動化にはコストがかかるため、自動テストによるカバレージを100%にすることを目標としてはいけない
  • バグが無いソフトウェアは本当に良いソフトウェアなの?
    • 顧客のビジネス価値の実現に寄与できるのが良いソフトウェア
  • XPでは、「問題の発生しそうなところはすべてテストせよ」と言っているが、全てをテストせよ、とは言っていない
  • カバレージ100%への最後の数%はいばらの道。残り数%のテストに、いままで作ったテストと同じだけの労力を必要とすることになる
  • 常に品質最優先ではなく、コスト・スケジュールと照らし合わせた割り切りも必要

テスト自動化のレガシープロジェクトへの導入

  • レガシープロジェクトとは?
    • 自動化されたテストが備わっていないプロジェクトのこと
    • 利用している言語やフレームワークには関係ない
  • レガシープロジェクトの問題点
    • 機能追加や改修の際に、現行機能に問題がないことを保証するためには、人力による再テストを実施するしかない
    • したがって機能追加・改修が度重なるたびに、テストのスコープが膨れ上がり、開発コストの増大につながる
    • 通常、ユニットテストによるテストを意識したモジュール間の依存性が低い状態になっていないため、テストしにくく、結合度の高さ故、変更を加えにくく、予期しない箇所に影響が出やすい
  • どうやって導入するか?
    • 結合テストレベルのテストを先に用意し、想定されるアプリケーション全体の動作をチェックできるようにする
    • これによって内部的なロジックを変更した場合でも、アプリケーション機能が壊れていないことは担保できる。その状態で、現行モジュールの修正に際しては、可能な範囲で、ユニットテストが可能になるように作り替えていく。(詳細はレガシーコード改善ガイドを参照のこと)
    • テストモジュールについてはSelenium等を利用すると良い
    • 新規開発のテストにおいて、SeleniumでHTTPリクエストをトレースする形でテストを作成するのは難しい(UIの変更が頻繁に起こる可能性がありテストのメンテナンスコストが高い)が、一方でUIが既に存在するアプリケーションのSeleniumでのテストは書きやすい

アジャイルコーチングやトレーニングを提供しています

株式会社アトラクタでは、アジャイル開発に取り組むチーム向けのコーチングや、認定スクラムマスター研修などの各種トレーニングを提供しています。ぜひお気軽にご相談ください。

詳細はこちら
  • スクラム実践者が知るべき97のこと
  • 著者/訳者:Gunther Verheyen / 吉羽龍太郎 原田騎郎 永瀬美穂
  • 出版社:オライリージャパン(2021-03-23)
  • 定価:¥ 2,640
  • スクラムはアジャイル開発のフレームワークですが、その実装は組織やチームのレベルに応じてさまざまです。本書はスクラムの実践において、さまざまな課題に対処してきた実践者が自らの経験や考え方を語るエッセイ集です。日本語書き下ろしコラムを追加で10本収録
  • プロダクトマネジメント ―ビルドトラップを避け顧客に価値を届ける
  • 著者/訳者:Melissa Perri / 吉羽龍太郎
  • 出版社:オライリージャパン(2020-10-26)
  • 定価:¥ 2,640
  • プロダクト開発を作った機能の数やベロシティなどのアウトプットで計測すると、ビルドトラップと呼ばれる失敗に繋がります。本書ではいかにしてビルドトラップを避けて顧客に価値を届けるかを解説しています。
  • SCRUM BOOT CAMP THE BOOK 【増補改訂版】
  • 著者/訳者:西村直人 永瀬美穂 吉羽龍太郎
  • 出版社:翔泳社(2020-05-20)
  • 定価:¥ 2,640
  • スクラム初心者に向けて基本的な考え方の解説から始まり、プロジェクトでの実際の進め方やよく起こる問題への対応法まで幅広く解説。マンガと文章のセットでスクラムを短期間で理解できます。スクラムの概要を正しく理解したい人、もう一度おさらいしたい人にオススメ。
  • みんなでアジャイル ―変化に対応できる顧客中心組織のつくりかた
  • 著者/訳者:Matt LeMay / 吉羽龍太郎、永瀬美穂、原田騎郎、有野雅士
  • 出版社:オライリージャパン(2020-3-19)
  • 定価:¥ 2,640
  • アジャイルで本当の意味での成果を出すには、開発チームだけでアジャイルに取り組むのではなく、組織全体がアジャイルになる必要があります。本書にはどうやってそれを実現するかのヒントが満載です
  • レガシーコードからの脱却 ―ソフトウェアの寿命を延ばし価値を高める9つのプラクティス
  • 著者/訳者:David Scott Bernstein / 吉羽龍太郎、永瀬美穂、原田騎郎、有野雅士
  • 出版社:オライリージャパン( 2019-9-18 )
  • 定価:¥ 3,132
  • レガシーコードになってから慌てるのではなく、日々レガシーコードを作らないようにするにはどうするか。その観点で、主にエクストリームプログラミングに由来する9つのプラクティスとその背後にある原則をわかりやすく説明しています。
  • Effective DevOps ―4本柱による持続可能な組織文化の育て方
  • 著者/訳者:Jennifer Davis、Ryn Daniels / 吉羽 龍太郎、長尾高弘
  • 出版社:オライリージャパン( 2018-3-24 )
  • 定価:¥ 3,888
  • 主にDevOpsの文化的な事柄に着目し、異なるゴールを持つチームが親和性を高め、矛盾する目標のバランスを取りながら最大限の力を発揮する方法を解説します
  • ジョイ・インク 役職も部署もない全員主役のマネジメント
  • 著者/訳者:リチャード・シェリダン / 原田騎郎, 安井力, 吉羽龍太郎, 永瀬美穂, 川口恭伸
  • 出版社:翔泳社( 2016-12-20 )
  • 定価:¥ 1,944
  • 米国で何度も働きやすい職場として表彰を受けているメンローの創業者かつCEOであるリチャード・シェリダン氏が、職場に喜びをもたらす知恵や経営手法、より良い製品の作り方などを惜しみなく紹介しています
  • アジャイルコーチの道具箱 – 見える化の実例集
  • 著者/訳者:Jimmy Janlén / 原田騎郎, 吉羽龍太郎, 川口恭伸, 高江洲睦, 佐藤竜也
  • 出版社:Leanpub( 2016-04-12 )
  • 定価:$14.99
  • この本は、チームの協調とコミュニケーションを改善したり、行動を変えるための見える化の実例を集めたものです。96個(+2)の見える化の方法をそれぞれ1ページでイラストとともに解説しています。アジャイル開発かどうかに関係なくすぐに使えるカタログ集です
  • カンバン仕事術 ―チームではじめる見える化と改善
  • 著者/訳者:原田騎郎 安井力 吉羽龍太郎 角征典 高木正弘
  • 出版社:オライリージャパン( 2016-03-25 )
  • 定価:¥ 2,138
  • チームの仕事や課題を見える化する手法「カンバン」について、その導入から実践までを図とともにわかりやすく解説した書籍。カンバンの原則などの入門的な事柄から、サービスクラス、プロセスの改善など、一歩進んだ応用的な話題までを網羅的に解説します。
  • Software in 30 Days スクラムによるアジャイルな組織変革“成功"ガイド
  • 著者/訳者:Ken Schwaber、Jeff Sutherland著、角征典、吉羽龍太郎、原田騎郎、川口恭伸訳
  • 出版社:アスキー・メディアワークス( 2013-03-08 )
  • 定価:¥ 1,680
  • スクラムの父であるジェフ・サザーランドとケン・シュエイバーによる著者の日本語版。ビジネス層、マネジメント層向けにソフトウェア開発プロセス変革の必要性やアジャイル型開発プロセスの優位性について説明
  • How to Change the World 〜チェンジ・マネジメント3.0〜
  • 著者/訳者:Jurgen Appelo, 前川哲次(翻訳), 川口恭伸(翻訳), 吉羽龍太郎(翻訳)
  • 出版社:達人出版会
  • 定価:500円
  • どうすれば自分たちの組織を変えられるだろう?それには、組織に変革を起こすチェンジ・マネジメントを学習することだ。アジャイルな組織でのマネージャーの役割を説いた『Management 3.0』の著者がコンパクトにまとめた変化のためのガイドブック