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開発者からイベントのせいで開発できる時間が減ってしまうと言われますがどうしたらいいですか
このような声が上がる背景には、「より多くの時間をコードを書くことに使いたい」「イベントが多くて集中できない」といった気持ちがあるのかもしれません。しかし、スクラムは「効率(Efficiency)」ではなく「効果(Effectiveness)」を重視するフレームワークです。単に開発時間を最大化することが目的ではありません。
まず押さえておくべきは、スクラムで定義しているイベントは必要最低限のものであり、それぞれに明確な目的がある点です。 スクラムでは、スプリントプランニングでゴールを決め、デイリースクラムで毎日スプリントゴールの達成可能性を検査し、スプリントレビューでインクリメントを提示してプロダクトを検査・適応し、スプリントレトロスペクティブで、スクラムチーム自身の有効性を検査・適応します。 これらがなければ、ムダな開発をしたり、スクラムチームのパフォーマンスが停滞したりする可能性があります。また、それぞれのイベントは有機的に関連しているので、イベントを省略してはいけません。
また、各イベントにはタイムボックス(時間の上限)が定められています。もし「イベントが長くて開発できない」と感じているのであれば、イベントの時間が長すぎるなど、イベントの進め方に改善の余地がある可能性があります。タイムボックスを守れないのは問題がある証拠なので、スプリントレトロスペクティブなどでスクラムチームの大きな問題として扱い、改善しなければいけません。
さらに、「アジャイルソフトウェア開発宣言」の原則には 「シンプルさ(やらずに済ませる仕事量を最大化すること)が本質です」 という言葉があります。スプリント中に「できるだけ多く作る」ことを目指すのではなく、「本当に必要なものだけを、フィードバックを得ながら作る」ことに価値があります。つまり、イベントを減らして開発時間を稼ぐよりも、イベントが生み出す価値を最大化するように改善してください。
なお、この発言が出る理由として、スクラムチームの外から不適切なプレッシャーがかかっている場合もあります。 「もっとたくさん作れ」「期限までに◯◯は必達」といった圧力があり、それをそのまま受け入れてしまうと、本来のスクラムの効果を発揮できません。このような場合は、スクラムマスターが中心となってその状況を明らかにし、ステークホルダーに働きかけるなどの対処が必要です。
カテゴリ
SCRUM BOOT CAMP THE BOOK【増補改訂版】 スクラムチームではじめるアジャイル開発
- 著者/訳者:西村 直人、 永瀬 美穂、 吉羽 龍太郎
- 出版社:翔泳社
- 発売日:2020-05-20
- 単行本(ソフトカバー):288ページ
- ISBN-13:9784798163680
- ASIN:4798163686